どんな子どもが生まれるのか。
妊娠前には誰にも予測できません。
妊娠中や、出産後、自分の子どもに障害があることを突然知らされ、「育児ではなく、介護になってしまった」と話す親御さんもいます。
そして、障害児を育てる多くの親御さんは、障害児のお世話を誰にも頼めず自分一人で抱え込み、やりたいことや仕事を諦めていきます。
でも、障害児保育園ヘレンを利用する親御さんたちは違います。悩みを抱えながらも、育児だけでなく、仕事ややりたいことに挑戦されています。
出産から子育て、そして社会復帰まで、どんな思いで過ごされているのか。
今回、障害児保育園ヘレン荻窪を利用する、大津碧人くんのお母さんにインタビューをしてその想いを伺ってきました。
大津和沙さん、大津碧人(あおと)くん(3歳)
先天性食道閉鎖症、気管軟化症、口蓋裂、慢性硬膜下血腫、重度難聴など複数の障害があり、人工呼吸器、吸引、経管栄養(胃ろうの医療的ケア)が必要。昨年10月に障害児保育園ヘレン荻窪に入園
妊娠中の何がいけなかったの・・・自分を責めた出産
ーーヘレンに入園して5ヶ月ほどになりますね。碧人くんは、複数の障害があるとのことですが、障害を知ったときの気持ちを教えて下さい。
妊娠中にへその緒の動脈が1本少ないことがわかり、「まれに障害児が生まれてくることがある」と医師から告げられました。そして、週数が進むにつれて羊水の量もどんどん多くなっていきました。赤ちゃんが羊水を飲めていなかったそうです。エコーで臓器を確認するときに胃が映っていないことがわかり、先天性の食道閉鎖症ということがわかりました。
そして産まれてきてからも、耳が片方無かったり、心臓に穴が開いていたり、合併症がいろいろあったりして。2歳になった頃、指定難病であるチャージ症候群ということもわかりました。
ーー生まれてからたくさんの障害があることがわかったんですね。生まれたときは、どのようなお気持ちだったのですか?
緊急帝王切開での出産で、産声を上げなくて、正直「駄目だったのかな」と思いました。その後先生方の努力の甲斐もあって無事挿管出来て、蘇生してもらえて本当に嬉しかったです。
ただ少し冷静になったときに、「なんでこんなに病気が多い子に生まれちゃったんだろう」「妊娠中の何がいけなかったんだろう」とそのときはすごく考えましたね。
碧人が生まれた時は嬉しいという気持ちより、心配、不安の方が大きかったかもしれないです。
さらに、入院中には何度も手術をして、中には半日にも及ぶ手術もして…。気管切開をして声が聞こえなくなってしまった時には、夫とたくさん泣きました。今までで一番辛かったです。
酷い時期は息子を“物”のように扱ってしまったこともあったかもしれない。自宅に引きこもっていた毎日
ーー退院して自宅に戻ってからは、どんな生活を送っていましたか?
昼夜関わらず定期的に吸引などの医療ケアが一日中必要です。夜中は私、朝は夫と分担していて、3歳になった今もその生活は続いています。
ヘレンに入る前は、すごく酷い言い方をすると、碧人を物みたいに扱ってしまったこともあったかもしれないです。
健常児と違いコミュニケーションなどがとれないので、時間になったら経管栄養をつなげて、時間になったら吸引をして。入院生活がすごく長かったので、暗くしたら勝手に寝る子なんです。特に服を汚しもせず、汗もかかないので、一日ずっとパジャマでいるという生活をしていました。
碧人をみられる人は、私か夫か看護師さんしかいないので、気軽に預けられませんよね。それで、私はほとんど自宅にいたので、どんどん社会が遠のいていく感じがあって、「周りからすごく取り残されていくなぁ」と思っていました。
ーーそんな中で、ヘレンを見つけてくださって本当によかったです。ヘレンに入園したいと思ったのはどうしてだったのですか?
碧人には申し訳ないですが、私自身のためでもあります。
外に出たい、働きたい、以前のような生活に戻りたい、というのがずっとありました。そして、「私が幸せでいないと、碧人に愛情を与えられないな」と思ったからです。
実は、妊娠7ヶ月頃に、「もしかしたら障害児が生まれるかもしれない」と分かった時点で、インターネットで色々と調べ始めました。障害児のこれからの生活、保育園、小学校、中学校、高校と、どういう生活になるのかなという先々のことまで調べていたときに、ヘレンが出てきました。
ヘレン入園、社会復帰。親子の関係にも変化が
ーー生まれる前から調べていたんですね。ヘレンに入園して、お仕事にも復帰できましたが、復帰が決まったときはどんな気持ちでしたか。
入園が決まったときは、「わー、復帰できる!」と夫に泣きつきました。時間は短いですが、1人の時間が与えられただけでも嬉しいです。
1人の社会人として、人から必要とされて、会社にも自分の居場所があって、家にも自分の居場所があって、友達の中にも居場所があって、いろんな中で外出できる大切さが分かりましたね。夫からは「明るくなったね」と言われました。
ーー碧人くんには何か変化はありましたか?
ヘレンに入園してから集団生活がすごく楽しいのか、笑顔がすっごく増えました。そして、寝返りとお座りができるようになってきたんです。そういった成長が、すごく嬉しいなと思っています。
自分と同じように、出かけるときは服を着るし、今、ご飯も少しずつ口から食べられるようもなってきています。以前までは全然できなかったのに。
集団生活は大事だなと思いました。
最近では、おしゃべりまでするようになったんですよ!
ーーすごい変化ですね!お母さんも嬉しいですね。
私自身も、碧人に対する気持ちが変わりました。
嬉しそうな碧人を見てもっといろんな人と会わせたいと思ったり、行ったことのない場所に連れて行ってあげたいと思うようになりました。食事も、ただ時間になったら経管栄養をつなぐのではなく、碧人がお腹が空いたかなと思ったらつなぐようになりました。
ヘレンに通うまでは、大人と一緒に夜の12時に寝ても気にせずいいかなと思っていましたが、今は碧人は夜9時ぐらいになったらスッと眠るようになり、朝も大人と一緒に起きて規則正しい生活を送れています。
だから今は、障害児としてではなく普通の子供としてかわいがってあげられる。以前は介護しているとしか思えなかったんですけど、今は育児をしていると思えます。
ーー親子の関係も変わってきたんですね。
ヘレンに預けたことによって碧人と離れる時間が増え、以前より「かわいいな」「大切だな」と思うことが増えました。
一緒に成長を喜べる家族が増えた
ーー大津さんの今の生活はいかがですか?
ヘレンのスタッフの方たちが、碧人に関することを全部協力的にやってくれています。
私にも、「ちゃんとお薬を塗ってください」と叱ってくれるし、「あおちゃんのために、チェックリストを作ったほうがいいですよ」とアドバイスもくれるし。
入園直後は、碧人は口からご飯を食べていなかったんですけど、スタッフの方に一緒にリハビリの場所に来てもらったりしながら、碧人の食べ具合を見てくれています。「一緒に頑張りましょう」と言ってくれて。碧人は今すごい勢いで、口から食べられるようになってきています。
逆に、私からヘレンのスタッフの方々に、「寝たきりの子ですが、できれば座った状態でいさせてください」とお願いしたら、保育園でお座りの練習をしていてくれて。今はお座りがもうちょっとでできそうになってきました。私が仕事に行っている間にヘレンでスタッフの方たちが、私に代わってできることをたくさんしてくれています。
一緒に成長も喜んでくれるのも、すごく嬉しいです。
ヘレンの皆さんがいてくれて、家族が増えた気持ちです。本当に碧人を自分の子どものようにかわいがってくれるんですよ。
今までは、「寝返りができるようになった。パパ!」と夫に話すだけだったのですが、「聞いてください!寝返りができたんです!今日やると思うので見てください!」とスタッフの皆さんに言える。みんなで碧人を育てているイメージに、勝手ながら思っています(笑)。
ーー最後に、障害児を育てる親御さんに向けてメッセージをお願いします。
障害児を育てるのはとても大変だと思います。ですが健常児の子育てと変わらない生活を送ってみてください。
いろんな場所へお出かけをして、たくさん楽しいことをして、たくさん笑ったり泣いたりして。
周りにいる多くの人と一緒に愛情をいっぱい与えて、育ててあげてください。
私と碧人にそのきっかけを作ってくれたのは障害児保育園ヘレンでした。スタッフの皆さんが愛情をたっぷり注いでくれて本当に感謝しています。
ーーありがとうございます。私たちは、障害児を親御さんしかみられないと思っていません。みんなで育てていくものと思っています。これからも一緒に子育てをしていきたいです。たくさん嬉しいお話を伺えて、私たちも励みになります!
利用希望者向け説明会実施中!
今年度中の職場復帰をお考えの方を対象に、「障害児保育園ヘレン」「障害児訪問保育アニー」の利用希望者向け説明会を実施します。
また、説明会への参加が難しいご家庭に「説明会のオンライン中継」を予定しています
障害児保育園ヘレン荻窪・初台の見学会実施中!
《入園対象となるお子さん》
肢体不自由、重症心身障害、経管栄養・経鼻栄養・胃ろう・腸ろう等の医療的ケア、疾病などで保育園に入れないお子さん(医療的ケアがない場合を含みます)
《ご見学対象となる方》
・下記エリアにお住まいの方
荻窪園対象エリア:杉並区全域、練馬区(上石神井南町、関町南、立野町)、中野区(大和町、若宮、白鷺)
初台園対象エリア:渋谷区全域、(渋谷区隣接エリアの方は応相談)
・区の保育課により、保育の必要性が認められるお子さん(保護者の就労等)
※初台園は重症心身障害児向けの施設となります
《見学のお申し込み》
下記フォームからお申し込みください。