「いずれ育児休暇が明けたら、子どもを保育園に通わせたい」と思っている育休中の医療的ケア児の保護者のみなさん、いかがお過ごしですか?実は、この時期を有効に使うことで、お子さんや親御さんの入園時の環境変化によるストレスを減らし、スムーズに迎えることができます。
では、どのように過ごすのがいいのでしょうか?長年たくさんの障害児をお預かりしてきた、障害児保育園ヘレン中村橋の園長(当時)にお話を聞いてきました!(※こちらは2020年10月当時の記事です。)
こんにちは!障害児保育園ヘレン中村橋で園長をしています、遠藤です。
来年春に向けて、入園できる保育園をお探しの方も多い時期かと思います。
手探りの育児が始まったかと思ったら、次は保活。特に、障害児や医療的ケア児を受け入れてくれる保育園はまだまだ少なく、職場復帰したいのに、保育園に入れるのか入れないのかわからない状況ですと、不安でさらに疲れがピークに…なんてこともあるかもしれません。
そんなときこそやってみてほしいことがあります。
育休は長くて2歳になる前日までとれるので、入園前の時間をお子さんとゆっくり過ごせる貴重な時間と前向きに捉え、その間にお子さんのためにできるオススメの過ごし方です。
遠藤愛 園長
2014年フローレンスに入社。同年に障害児保育園ヘレンの1号目の園、荻窪園の園長に就任、以降障害児保育のパイオニアとして奔走。2018年にできた中村橋園の園長に就任し、障害児保育一筋で保育に携わる
入園前に児童発達支援施設に通うことが、実は親子ともにメリットが
障害児や医療的ケア児は、生まれた直後から長期でNICUに入院する子どもがほとんどです。退院するときに、病院から今後頼れる相談先の情報をいくつかもらうご家庭もありますが、多くの親御さんは、自分で情報を集めながら育児を行っていると思います。
一方、情報や相談先が少ない親御さんは、一日中子どもとおうちで二人きりで過ごし、母子ともに孤立していくことも多いです。訪問看護やリハビリで医療従事者などとのやり取りはあるけれど、もう少し範囲を広げてみたいなと思っている方も多いのではないでしょうか。
そこで、私がオススメするのは、入園前に地域の「療育センター」を始めとした「児童発達支援施設」に通ってみることです。就労をされる親御さんにとっては、「子どもが通う場所=保育園」と考えがちですが、障害があるお子さんや病気のお子さんが入園前に通える場所があるんです。自分が住んでいる自治体に問い合わせると、いくつか教えてくれるのでぜひ聞いてみてください。
療育というのは、「治療」と「保育」「教育」をあわせたものです。そのため、児童発達支援施設では、保育士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、臨床心理士など、各分野のプロフェッショナルな方々が、遊びを通して子どもの成長をサポートしてくれます。(すべての職種の方がいない施設もあります)「施設」というと堅いイメージがありますが、保育園や幼稚園のような雰囲気で、先生が遊びを展開してくれます。お子さんだけで通う園もあれば、親御さんも一緒に通う園もあります。
そして、ここに通うことをオススメする理由は、大まかに言うとこんな感じです。
- 遊びの幅が広がります。お家ではなかなか経験できないようなダイナミックな遊び、感触遊び、うた遊びなど初めての遊びが経験できます。また、お家での遊び方の参考になることも多いと思います。
- お友達と遊ぶことができます。他の子どもからの刺激が成長に効果をもたらすこともあると思います。
- 同じような子どもがいる親御さんとお知り合いになれます。きっかけがないとなかなか親同士の交流が難しいという話も聞きます。同じ場で知り合うことで、交流が生まれ、良い気分転換になることもあると思います。
- 育児に必要な情報を得ることができます。医療的ケアに必要なグッズや、お出かけ情報など、生活を楽しくする情報も得ることができるかもしれませんね。障害児の情報を得る機会はまだ少ないため、当事者から得る貴重な機会です。
特に、子ども同士のふれあいは、おうちで親御さんと二人きりでは、実現できないことです。
(写真)保育する遠藤園長
児童発達支援施設での経験が、子どもの心と身体を強くする
実は、ヘレンに入園してくる子どもたちも、児童発達支援施設に通っていた子とそうでない子を比べると、登園を始めた段階で良い効果が出ることがあります。
(写真)ヘレンの保育の様子
まず、お家以外で過ごす経験が少なかったお子さんにとって、保育園入園後、突然週5日の長時間保育は大きなストレスになります。そのため、疲れて体調を崩すことが多いです。一般の保育園に通うお子さんであっても、入園したての頃は体調を崩すことが多いですよね。特に障害児の場合、体調を崩すと重症化したりすることもあるため、注意が必要です。
一方、児童発達支援施設に週1回でも通っていたお子さんは、体調を崩すことが少ないように思います。集団での生活の経験や、外出の経験を重ねると知らず知らずのうちに体力がついているのかもしれません。今は、新型コロナウイルスの影響もあって、外出しづらいところもありますが、親子ともに体調が良いときは少し外出してみるのがオススメです。
また、児童発達支援施設に通っていたお子さんは、他人に慣れているということもポイントです。食事一つでも、家族以外からの介助に慣れている気がします。
登園の行き帰りをとっても、外出に慣れているご家庭だと、親子ともに負担に感じずにできます。医療物品を持っての外出、不安も大きいですよね。バギーに詰めるのか、電車に乗れるのか、少しづつ練習してみたいですね。
保育園に通うことはお子さんだけではなく、親御さんにとっても心配は多いと思います。入園前に自宅以外で過ごす経験を積むことで、お子さんが家族と離れている間の日中のイメージが持て、ご家族にとっても安心なのではないでしょうか。
(写真)感触を楽しむしょういちろうくん
ここで、ヘレンの園児の一人、しょういちろうくんをご紹介します。医療的ケアが必要なお子さんです。入園前に、児童発達支援施設に通っていたこともあり、しょういちろうくんは自宅以外の場所にとても慣れていて、初めから園でも落ち着いて過ごせているようでした。抱っこも食事の介助も親御さん以外からの関わりを緊張せずに受け入れているようでした。お母さんには、児童発達支援センターで知り合った、先輩ママや後輩ママがいて、子連れでお出かけしたりとアクティブに過ごしていたそうです。そんな生活を送って、家族以外の大人と関わる機会を経験したことで、しょういちろうくんは他人への信頼を持てるようになったのかもしれませんね。
【しょういちろうくんお母さんからのメッセージ】
息子が1歳7ヶ月の頃、突然病気になりそれまでの生活が一変、障害児の子育ての右も左もわからない状況でした。
そんな中、入院していた病院で出会ったママから、近くの児童発達支援施設を教えてもらいました。最初は、病気になった息子が何も出来なくなった姿に本当に気持ちがついていっていなかったので、通うことを楽しみに思えていませんでした。ですが、通ううちに、先生や、施設に通う親子と接するうちに、少しずつ楽しい時間になっていきました。
何よりよかったのが、今でも頻繁に連絡を取り合うお友達に出会えたことです。いろんな生活の知恵や使えるグッズ、障害児向けのイベントなど、たくさん情報も教えてもらったり、いろんなところに一緒にでかけました。障害のある子どもを育てる同士のような、なんでも相談できるお友達が出来たことで、日々を楽しみに思えるようになったのです。
私の気持ちの変化と比例するように、息子にも「今楽しいのかな」と思える反応が出てきたことを覚えています。
児童発達支援施設では、自宅では体験できない寝て乗れるブランコや大きなトランポリンなどの遊具に乗ったり、夏には大きなプールに入らせてもらったり。遠足や運動会などイベントも経験して、息子の体もしっかりしていきました。
ヘレンに入園した後も、児童発達支援施設に通ったことで、生活のリズムが整っていたことや、集団慣れできていたこと、それによって免疫がついていたのか、健康に過ごせていたことがとてもよかったです。
また、息子がどんなことが出来るのか、気を付けてほしいことが何なのか、食事の介助の仕方など、親が活動内容がある程度想像できることで事前に伝えられることが多かったことも大きかったかなと思います。
毎日悲しくて仕方がなかった時期を乗り越えられたり、今の私と息子が笑ってポジティブに生活出来ているのは、児童発達支援施設で出会った人たちのおかげだと思っています。
はじめはどんな場所かわからず、不安もたくさんありましたが、行けばきっと行ってよかったと思えると思います。
このように、入園前に児童発達支援施設に通うことは、親子ともに楽しい時間を過ごす機会が増えるだけでなく、保育園に通う準備を整えることができます。児童発達支援施設はホームページや自治体に問い合わせることで、情報を得ることができますが、自治体によっては空きがない場合もあります。早めに申請をし、空きを待つとよいかもしれませんね。保育園に入園した後は仕事に育児に、バタバタと慌ただしくなることもあり、おこさんとゆっくり過ごせるのは育休中がチャンスです。ぜひ、思い切って、お子さんと一緒に外へ出かけてみてください。
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