障害児保育園ヘレンは、日本で初めて障害児を専門に長時間預かる保育園として、2014年に杉並区で一園目が開園しました。現在では都内に5つの園が展開し、「すべての子どもが保育を受けられ、保護者が働くことを選択できる社会」を目指して障害のある子どもの長時間保育を実現しています。
ヘレンでは先日学生の看護実習の受け入れを実施しました。そこで今回は実習内容を企画した看護師リーダーのスーパーバイザーである高橋さんにインタビュー! 実習内容とあわせてヘレンで働くことの意義や魅力についても語ってもらいました。
医療的ケア児の在宅支援における看護師の役割をヘレンでの実習を通して学ぶ
──今回はどういった点を目的として実習が行われたのでしょうか。
今回の実習は看護学校の3年生を対象に行われました。実習の目標は「障害のある乳幼児の成長や発達を促す保育支援を学ぶ」という点を軸に、障害のある子どもの特徴を踏まえた保育支援や、成長・発達に応じた集団保育、さらに医療的ケアが必要な乳幼児の支援を学んでもらうことです。
また、今回の実習は、看護学校側から小児看護の在宅支援の実習の一環として、ヘレンへ依頼をいただいて実現しました。私たちも初めての実習受け入れということもあって戸惑いもありましたが、学生さんに指導を行うことで、私たち看護師も改めて障害児保育園での看護支援について考える場や、ヘレンについて自分たちの言葉で語る機会にしたいという思いもありました。
──実習の具体的な内容を教えてください。
メインは見学実習で、医療的ケアや食事介助は行わず、トイレへの誘導やオムツ交換、着替えを手伝うなどの日常援助を行ってもらいました。また、保育にも参加してもらい、お昼寝の見守りや散歩中のバギー押し、バスの送迎なども。保育活動後や食後の片付け、掃除など、日頃ヘレンで看護師が行っているさまざまな仕事や保育環境の整備などを体験してもらいました。
──参加した学生さんからはどんな声が聞かれましたか。
学生さんからも素敵な感想をいただけて嬉しかったです。
「さまざまな疾病や障害を持つ子どもがいて、それぞれに合わせたケアや支援が必要なことが分かった」
「障害児保育園といっても一般的な保育園と変わらず、みんな楽しそうに過ごしていたことが印象的だった」
「重症心身障害児に最初はどう接したらよいかわからなかったが、スタッフの方に声のかけかたや抱っこなどを教えてもらい2日目には自分と目があってニコッとしてくれてうれしかった」
「スタッフさんが明るくて楽しそうに働いていた」
「朝の会の挨拶で子どもができるまで、スタッフが手助けせずに見守りに徹していて凄いなと思った」
などの感想がきかれました。
また、「最初は小児看護にあまり興味がなかったけれど、小児科病棟での実習や今回のヘレンでの実習を通して子どもがかわいくてたまらなくなった」という声も聞かれたのはうれしかったですね。
気管切開や胃ろうをしている子どもを初めて見るという学生さんもいて、こういったケアが必要な子どもがこんなにもいるのかという驚きの反応もみられました。
──医療的ケア児について、看護学校で学ぶ機会はあまりないのでしょうか。
教科書の在宅支援や訪問看護の項目に掲載されているので、学ぶ機会はあると思います。近年では医療的ケア児のテーマを取り扱うセクションは入院よりも在宅支援に切り替わりつつあるようです。できるだけおうちに帰ろうという流れがあり、今後は医療依存度の高い医療的ケア児の在宅支援が求められ看護師のサポートの必要なケースが増えていくと思います。
──では今後はヘレンのような保育園がより求められるようになるのですね。
そうですね。一般的な認可保育園の保育実習でも医療的ケア児がクラスにいるケースが増えるのではないでしょうか。社会の流れが変わってきて、認可保育園でも医療的ケア児の預かりが徐々に進みつつありますから。
そのため今後ヘレンは呼吸器を装着したお子さんや発作のあるお子さんなど、重症心身障害児を安全に預かれる施設になっていく必要があると考えています。病院と異なり、医師のいないお預かりの現場では看護師の的確な判断が大切だと思います。
看護師として子どもの日常に寄り添い、成長と発達を見守る
──ヘレンでは看護師はどのように働いているのでしょうか。1日の流れを教えてください。
勤務時間は人によって異なりますが、基本はバスの送迎からスタートします。ヘレンでは朝夕送迎を行っていて、添乗するスタッフと園に残って登園対応するスタッフとに分かれます。子どもたちが登園してきたら、水分注入や吸引・吸入、導尿などの医療的ケアや排泄介助などを行ない、10時ごろから保育活動を始めます。
昼食時間は経口で食べる子どもへ摂食指導や食事介助、経管栄養や胃ろうなどからの注入と見守りを行います。お昼寝では、発作の出るお子さんもいるので、スタッフが常時見守っています。そしておやつ介助や注入を行って降園準備。登園時と同じように、バスに添乗するスタッフと園で降園対応するスタッフとに分かれます。降園時に保護者に園での様子をお伝えして、親御さんが関われなかった時間帯のできごとを共有することも大切です。
──看護師としてヘレンで働くにあたってどんな点が特徴的ですか。
看護師だけでなく、保育士や作業療法士などのリハ職とも連携して保育を行う点ですね。それぞれの専門性や強みを活かすことを意識するようにしています。成長や発達を促す声がけができるのはやはり保育士さんがプロですし、体の機能的な知識は作業療法士さんがプロですから。まずは専門的なアドバイスに耳を傾けます。
──意見がぶつかることはありませんか。
お互い専門家だからこそ認識のズレが生まれることもあります。たとえば子どもが何かにチャレンジしようとしているとき、そこに転ぶかもしれないというリスクがあるとします。保育士さんにとっては成長発達の過程において転ぶことは当たり前だから、チャレンジさせてあげたいですよね。
しかし、看護師の場合は転んでケガをしないか、痛みを伴うことはないか安全面を重視します。もちろんチャレンジさせないという選択肢はなく、転んでも大丈夫なように準備をするのですが、そういったお互いの視点のすり合わせは大事だと感じています。
──なるほど。病院勤務とは異なる視点も必要となりそうですね。ヘレンに入職後はどういった研修を行うのでしょうか。また、指導する際に心がけていることを教えてください。
小児看護や在宅看護の経験者を中心に採用しており、基本的な医療的ケアは行えることを前提として育成します。研修は重症心身障害児の基礎研修や救急救命研修、保育に関する研修などを受講してもらっています。外部研修もヘレン各園に情報共有して、受講できるような体制を整えています。
看護師への指導という点では、ヘレンではチームで保育を行うのでみんなで同じ方向を向き、保育目線で子どもの成長発達を促すことを心がけていますね。子どもの成長発達についても、改めて勉強の機会を設けています。
たとえば食事の支援をする際、一般的に看護師は子どもの抱える病気に焦点を当てて行いますが、ヘレンでは成長発達も考えながら行う必要があります。何らかの病気によって障害はあるものの、いわゆる“病気の子ども”として扱うわけではないという点を理解するよう指導を行っています。
──他にも病院勤務の看護師さんとの違いはありますか。また、ヘレンでのどんな業務にやりがいがあるでしょうか。
子どもと長い時間関われるという点が大きく違います。病院では一人の子どもに付き添える時間は5分から10分くらいが限度です。しかし、ヘレンでは担当クラスのお子さんと丸1日過ごすことができ、日常生活に寄り添えます。
入職の面接をする際にも、実際に「子どもともっと長く関わりたくて応募した」と話される方も多く、やりがいにもつながっているのではないかと感じています。
いちばんのやりがいは、子どもの成長を親御さんとともに喜べることだと思いますね。入園当時は寝返りやお座りもできなかったお子さんが卒園時には一人で歩けたり、経管栄養だったお子さんが口から食事が摂れるようになったり……。入園当時の映像を振り返ると、成長を感じて本当にうれしくなり、改めてこの仕事の魅力を感じます。
一人ひとりのお子さんの成長に寄り添い「親子の笑顔」をともに増やしませんか?
ヘレンでは、保育士やリハ職のスタッフとともに看護師も子どもたちの保育に積極的に関わります。病院では治療を目的として看護を行いますが、ヘレンでは一人ひとりの成長を支援することを大切にしており、その先にあるのが親子の笑顔です。その笑顔を見ることが看護師としての大きなやりがいにつながっています。
子どもが好きで、子どものために仕事がしたいと考えている方。多職種チームで連携し、広い視点で保育に携わることのできる方。ヘレンではそんな看護師のみなさまをお待ちいたしています。
また、看護師だけでなくさまざまな職種も募集中です。随時オンラインでの説明会や個別相談も実施していますので、お気軽にご参加ください
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